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[書籍レビュー]メタバース さよならアトムの時代

· 約10分
moritalous

ITエンジニア本大賞2023の中で気になった書籍を購入しました。

とてもおもしろい本 でした。さすが大賞!

ちなみにタイトルに有るアトムですが 鉄腕アトムではなく物質 を指します。

概要

出版社サイトより

2022年最注目キーワード〈メタバース〉が一番よくわかる教科書。 GAFAMがしのぎを削る現状から、VRの歴史や背後の思想、そして驚きの未来像まで、メタバースに関わるすべてを網羅! 「世界を変える30歳未満30人の日本人」(Forbes JAPAN)に選出された、メタバースプラットフォームcluster創業者が幻視する、人類が物質(アトム)の束縛から解き放たれる未来とは?

レビュー

第1章 メタバースとは何か

メタバースはSFの世界では1960年代ごろから登場しており、ゲームもルーツの一つ。

メタバースの9つの条件が定義されており、特にメタバース特有の条件としては 「身体性」 「自己組織化」 が挙げられていいます。

身体性とは、ディスプレイの向こう側に広がるデジタル空間ではなく、 デジタル空間の中に住む感覚 。自己組織化とは、個々が自律的に振る舞っているのに結果として秩序だった大きな構造が生まれること。身体性がこれまでのインターネット上のコンテンツとの違い、自己組織化がMMORPGとの違い。

Meta(旧Facebook)がどうしてメタバースに掛けたのかがわかりやすく説明されている。

第2章 メタバース市場とそのプレイヤーたち

ゲーム業界とSNS業界がなぜメタバースで競合するのか、NFTとの関連などが紹介されている。

この章の前半では、メタバースの構造を 「体験」 「デバイス」 「空間」 の3レイヤーに分けて解説。後半では更に詳細な7レイヤーに分けて解説。この中でWeb 1.0からWeb 2.0、Web 3.0への進化にも触れられている。

Web 1.0は検索して情報を入手する世界、Web 2.0はSNSを通じて情報発信も行う双方向と理解しているが、Web 3.0の浸透には、 デバイスが鍵 になるのかなと思った。

スマホの登場でWeb 2.0が成功したと思うが、SNSを世に広めるためにスマホが出てきたわけではなく、それまでのフューチャーフォンの進化系として大勢がスマホに乗り換え、SNSが普及しやすい環境になったからだと理解している。メタバースを普及させるためにデバイスを乗り換えるのではなく、 スマホの進化系が結果としてメタバースに適した環境 というのが良いのだろうなと思った。スマホの正常進化系としてグラス型になる未来が来るのかな?

第3章 人類史にとってのメタバース

計算の歴史、数学の歴史を振り返る。なるほどと思う反面、少し眠たくなったw。「現実は圧縮されている」ことにつなげるための説明のようだったので、「圧縮されている」という内容だけ理解した。

産業革命以降を「モビリティの時代」と名付け、 メタバース化した世界を「バーチャリティの時代」 と名付けて説明しているが、このあたりは著者の予想の内容になるので、なるほどと思ったが、鵜呑みにはしないでおこうと思いました。究極は移動しない時代と言うのはちょっと言いすぎかな、、と感じました。

第4章 VRという技術革命

VR技術の歴史、特に頭にかぶるデバイスの進化が説明されています。私はこういったヘッドマウントディスプレイは持っていないのですが、2020年発売のOculus Quest 2(Meta Quest 2)がやっと実用になったと理解しました。

なので、 デバイスの進化はまだまだこれから だと感じました。この章でマイクロソフトのHoloLensが出てこないのはエンターテイメント用途ではないからでしょうか。そういう意味ではメタバースもまずはエンターテイメント用途での普及を目指していて、マイクロソフトは商用利用でのメタバースアプローチという事かもしれません。

第5章 加速する新しい経済

著者はVR市場でお金が動くのは「ゲーム・イベント・エロ」の3つと考えました。この内、エロはやりたくない、ゲームは過去の経験から宝くじを当てるより難しい市場と思い、イベントにターゲットを絞ったとのこと。VRやARの活用案の中には、「それVRでやる必要ある?」というものも多い。 非日常体験を圧倒的な没入感で体感できるかが重要。 VRイベントのこれまでの実績が紹介されており、アーカイブ機能はまるでタイムマシンというところはとても興味深かったです。

メタバースでの収益化についても解説があり、NFTなども触れられている。私の感想としては「それVRでやる必要ある?」と同じように 「それNFTでやる必要ある?」と思うところはあります が、今後の発展に期待という感じでしょうか。遊べば遊ぶほど稼げるという内容も、なるほどと思うところもありましたが、おそらくそういう人が今のインフルエンサーや有名YouTuberのような形で出てくる可能性は大いにあると思いますが、みんながみんな、遊んでるだけで稼げるというのはないだろうな、という感想です。逆に、飛び込むなら今がチャンスということかもしれませんね。

第6章 メタバースの未来と日本

面倒くさいコミュニケーションの歴史として原始的な掲示板からSNSまで、どんどん楽に発信できる形態に進化していると紹介されており、その延長としてのメタバースは、 存在しているだけで情報発信している と主張されています。 現実世界とメタバースの主従関係が逆転する未来 が来る仮説や、 メタバースにおける日本のストロングポイント が紹介されています。

私自身、メタバースを体験したことがないので、ここまでの未来が来るの?と懐疑的なところはありますが、一度体験してみたいなとは強く感じました。VRグラスが欲しくなりました。